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自作CNCが動かない・振動する・脱調する原因は?GRBLで確認したい8項目

自作CNCの調整中に、モーターが「ガガガ」と振動するだけで軸が進まない、途中で止まる、加工後に原点へ戻らない、といった症状が出ることがあります。

こうした現象をすべて「steps/mmが違う」と考えて数値だけを変更するのは危険です。原因は、モーターのコイル配線、機械的な引っ掛かり、速度や加速度、ドライバーの電流制限、冷却、電源など、複数の場所にあります。

この記事では、GRBLを使った自作CNCで軸が正常に動かないときに、どの順番で確認すればよいかを整理します。

注意:確認作業は、刃物を外すか安全な位置へ退避させ、スピンドルが誤って回転しない状態で行ってください。配線の確認やコネクターの抜き差しは、USB、外部電源、スピンドル電源をすべて切ってから行います。通電中のステッピングモーターの抜き差しは、ドライバーを破損させる可能性があります。

まず「どのように動かないか」を分ける

最初に、症状を具体的に記録します。

  • 電源を入れてもモーターに保持力がない
  • モーターが振動・唸るだけで回転しない
  • 低速では動くが、高速にすると止まる
  • 動き始めや方向転換で脱調する
  • しばらく動かすと止まる
  • 無負荷では動くが、加工するとずれる
  • X・Y・Zの一軸だけ動かない
  • 複数の軸が同時に不安定になる

一軸だけの問題なら、その軸の配線、ドライバー、モーター、機械抵抗を疑いやすくなります。複数軸が同時に不安定なら、外部電源、制御基板、USB通信、共通設定なども確認対象です。

設定を変える前に、UGSのConsoleから$$を読み取り、現在値を保存してください。問題が悪化したときに元へ戻せるよう、変更は一項目ずつ行います。

1. 機械が手で無理なく動くか

最初に機械側を確認します。必ずすべての電源を切り、モーターが励磁されていない状態で行います。

  • レールやVホイールに異物がないか
  • ベルトが緩みすぎたり、張りすぎたりしていないか
  • プーリーの止めねじが緩んでいないか
  • 送りねじ、ナット、カップリングに引っ掛かりがないか
  • ケーブルや集塵ホースが可動部を引っ張っていないか
  • 軸端や固定具へ衝突していないか
  • フレームの歪みで特定位置だけ重くなっていないか

機械が重い状態で、モーター電流や加速度だけを上げるのは解決になりません。まず機械的な抵抗を取り除きます。

2. 4線式ステッピングモーターのコイル配線

モーターが回転せず、振動するだけの場合は、2組のコイルが正しく接続されているか確認します。

4線式バイポーラ型ステッピングモーターには、次の2組のコイルがあります。

コイルA:A1 ─ A2
コイルB:B1 ─ B2

線の色は製品によって異なるため、色だけで組み合わせを決めてはいけません。電源を完全に切り、モーターをドライバーから外した状態で、テスターの抵抗測定または導通確認を使って同じコイルの2本を特定します。

同じコイルの2本が別々の端子組へ分かれていると、モーターが前進せず振動することがあります。端子名は基板によって異なるため、実物のシルク印刷とドライバー資料を優先してください。

詳しい配線の考え方は、前回の記事「自作CNCを動かすGrblとは?CNCシールドの配線と外部電源の選び方」でも紹介しています。

3. GRBLの最高速度 $110$111$112

低速では動くのに高速移動で止まる場合は、軸ごとの最高速度が機械の能力を超えている可能性があります。

  • $110:X軸の最高速度
  • $111:Y軸の最高速度
  • $112:Z軸の最高速度

単位は通常mm/minです。GRBLは、各軸が設定された最高速度を超えないように動作を制限します。

最高速度を確認するときは、主軸を停止し、軸端から十分離れた位置で、一軸ずつ短い距離・低速から試します。Z軸はX・Y軸より可動範囲が短い場合が多いため、同じ距離で試さないでください。

公式のGRBL設定資料では、失速が起こる境界を確認した後、摩耗、摩擦、材料や工具の質量を考慮して、限界値から余裕を持たせる方法が説明されています。しかし、Studio Kuraの実機に適した数値は未確認です。インターネット上の設定値をそのまま入力せず、現在値を保存してから一軸ずつ確認します。

4. GRBLの加速度 $120$121$122

停止状態から動き始めるときや、方向転換した瞬間に脱調する場合は、加速度が高すぎる可能性があります。

  • $120:X軸の加速度
  • $121:Y軸の加速度
  • $122:Z軸の加速度

加速度を高くすると短時間で目標速度へ到達しますが、モーターが機械の慣性や摩擦に負けると、指令されたステップに追従できません。低い値では動きが穏やかになり、到達までの時間が長くなります。

一軸では問題がなくても、複数軸を同時に動かす加工では負荷が変わります。設定変更後は、主軸を回さないドライランでも確認してください。

5. ドライバーの電流制限と冷却

ステッピングドライバーの電流制限が低すぎると、モーターが必要なトルクを出せず脱調しやすくなります。高すぎると、モーターやドライバーが過熱し、破損や保護動作につながる可能性があります。

重要なのは、外部電源に書かれた最大電流と、モーターへ流す相電流は同じ設定ではないことです。電流制限の計算方法は、使用するドライバー基板の型番、電流検出抵抗、メーカー資料によって異なります。

Studio Kuraの実機で使っているドライバー型番とモーター定格は現在未確認です。そのため、この記事ではVREFの具体値を提示しません。

次の点を確認します。

  • ドライバーの正確な型番
  • モーター銘板またはデータシートの相電流
  • ドライバー基板の電流検出抵抗
  • ヒートシンクの有無
  • 冷却ファンと通風
  • 一定時間後にだけ止まるか

しばらく動かした後だけ症状が出る場合は、熱の影響も疑います。ただし、通電中の基板やドライバーへ手で触れて温度を確認しないでください。

6. 外部電源と配線

モーターが動き始めた瞬間に複数軸が不安定になる場合は、外部電源や配線も確認します。

  • 電源電圧がCNCシールドとドライバーの許容範囲内か
  • 電源容量が使用する軸数と負荷に対して不足していないか
  • プラスとマイナスが正しいか
  • 端子やコネクターに緩みがないか
  • 細すぎる配線や長すぎる配線を使っていないか
  • スピンドル電源とモーター電源を不適切に共用していないか
  • AC入力端子が露出していないか

A4988の代表的なキャリア基板について、Pololuは長い電源線などによるLC電圧スパイクが、供給電圧を超える過電圧を生じさせる可能性を説明しています。これはすべての互換基板へ同じ対策を断定するものではありません。実際に使用するドライバーとシールドの資料を確認してください。

7. USB通信と電気ノイズ

スピンドルを回したときだけ停止する、UGSとの接続が切れる、リミットが誤検知する場合は、電気ノイズも確認対象です。

  • スピンドル線とUSB・リミット・信号線を離す
  • USBケーブルやコネクターの状態を確認する
  • 必要に応じてシールド線やフェライトコアを検討する
  • 接地方法を確認する
  • スピンドル、ステッピングモーター、制御系の電源構成を確認する
  • UGSのConsoleにエラーやALARMが出ていないか記録する

GRBLのハードリミットは、安全のため即座に動作を停止します。ノイズでリミット入力が誤検知されると、突然ALARMになる可能性があります。公式資料もハードリミット配線で電気的干渉への対策を強く推奨しています。

8. steps/mmだけで直そうとしない

$100$101$102は、モーターのステップ数と機械の移動距離の比率を設定する項目です。

「100 mm指令したら、毎回98 mmだけ動く」のように、一定比率で繰り返す誤差の校正には使えます。一方、次の問題はsteps/mmだけでは直りません。

  • 測るたびに移動量が変わる
  • 途中でモーターが止まる
  • 方向転換したときだけずれる
  • ベルトやプーリーが滑る
  • モーターが振動するだけで回らない
  • 加工負荷がかかったときだけ位置を失う

steps/mm校正の手順は「Universal Gcode Senderで自作CNCを調整する|GRBLの$100・$101・$102とsteps/mm校正方法」をご覧ください。

症状別の確認順

振動するだけで回らない

  1. すべての電源を切る
  2. モーターのコイルの組を確認する
  3. 端子順とコネクターを確認する
  4. ドライバーの向きと型番を確認する
  5. 機械的な引っ掛かりを確認する

低速なら動くが高速で止まる

  1. $110$111$112の現在値を保存する
  2. 一軸ずつ安全な低速で確認する
  3. 最高速度と加速度を分けて確認する
  4. 電流制限、電源、機械抵抗を確認する

動き始めや方向転換でずれる

  1. $120$121$122を確認する
  2. ベルト、プーリー、カップリングを確認する
  3. バックラッシュを確認する
  4. ドライバー電流と機械負荷を確認する

しばらく動かすと止まる

  1. ドライバーとモーターの型番・定格を確認する
  2. 電流制限をメーカー資料と照合する
  3. ヒートシンク、冷却、通風を確認する
  4. 外部電源と端子を確認する

記録しておきたい項目

確認日:
症状:
症状が出る軸:
発生する速度・動作:
主軸停止時の結果:
主軸回転時の結果:

GRBLバージョン:
UGSバージョン:
$110 / $111 / $112:
$120 / $121 / $122:
$100 / $101 / $102:

ドライバー型番:
モーター型番・相電流:
外部電源:
冷却方法:
機械側で確認したこと:
変更した項目:
変更後の結果:

一度に複数の設定を変更すると、何が原因だったのか分からなくなります。変更前の$$を保存し、一項目ずつ確認してください。

まとめ

CNCが動かない、振動する、脱調するときは、次の順番で切り分けます。

  1. 症状と発生条件を記録する
  2. 電源を切って機械的な抵抗を確認する
  3. モーターのコイル配線を確認する
  4. GRBLの最高速度と加速度を確認する
  5. ドライバー電流と冷却を確認する
  6. 外部電源と配線を確認する
  7. USB通信とノイズを確認する
  8. steps/mmで直す問題かを区別する

数値を大きく変更して試すのではなく、主軸を停止し、一軸ずつ、安全な短距離・低速から確認することが大切です。機械の仕様や配線が分からない場合は、通電や設定変更を続けず、型番と現在値の記録から始めましょう。

参考資料

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